新しい学校、新しい制服、新しいクラス、新しいクラスメート。いつもと違う雰囲気に、知らず知らずのうちに背すじが伸びる。  どきどきしながら教室に入ると、先に席についていたひとたちと目が合う。ある者は秒で興味をなくしたのかふいと視線を外し、ある者は穴が開くほど見つめてくる。そのなかに見知った顔がいくつかあってほっとした。たとえ今までたいして会話をしたことがなくても、たとえ一方的にその存在を知っているだけだとしても、知らないひとばかりでないというのは心強い。  指定されている席を探し、歩き出す。思っているよりも緊張していたらしい。手汗が吹き出していることに気づかず、握り直したはずの制カバンが手のひらから滑り落ちた。そのはずみでカバンのふたが開き、なかのものが飛び散る。転がっていく。  全方位から視線を集めてしまったことだろう。見なくてもわかる、背中に突き刺さってくる。ここから一ミリも顔を上げることができない。恥ずかしすぎて。  あ、とも、う、ともつかない絞り出すような音が自分ののどから出た。こんな声出せたんだ――じゃなくて。  あわててしゃがみ込み、何度も取り落としながら拾っていく。ふと足音が近づいてきて誰かのかがむ気配がした。少しくたびれた上履きのつま先とズボンが視界に飛び込んでくる。差し出されたプリント数枚を反射で受け取った。 「災難だったなー」  笑いを含んだ声にぱっと顔を上げる。――誰だろう。初めて見るひとだった。うちの中学にもこんなカッコの不良がいて、いくつか派閥があったりした。このひともそういうのなのかな。目が合うと、にっといたずらっこのような笑みを浮かべた。 「……えっと……」 「水戸。水戸洋平っての」 「水戸くん」 「うん、なに?」 「ありがとう、…………ございます」  カタいのはナシだって! と言ってくれて、笑い飛ばしてくれて、それから拾うのを手伝ってくれて。消えてしまいたいほどの恥ずかしさが和らいでいく。 「水戸くん、あのね。私の名前は――」 2023.09 SD夢ワンドロワンライ企画様提出「新学期」